| あらすじ | 背景 | 登場人物・キャスト・装束 |
能『弱法師』(よろぼし) まとめ
- 聖徳太子建立七大寺の一つである、大阪 四天王寺にまつわる話。
天王寺*1は四天王寺の略称です。 - 事実ではない、ありもしない話で大切な息子を追い出してしまった官職の男性(ツレ)とその息子(シテ)の話。
- 新元号「令和」元年にふさわしい演目で、梅*2の香りを聞く場面で情趣深い様子が表現されます。
- 天王寺から難波の浦を眺めるのは、西を向くということ。
- 弱法師(俊徳丸*3)には、家柄やかつて身に着けた教養により、洗練さや内面の美しさも感じられます。
- 俊徳丸が天王寺で信心深く過ごす様子の象徴として、西に沈む太陽を拝む*4という様子が取り入れられています。
ただ、夕日の景色を眺めるのではなく、仏教の修行の過程を経ているを様子を表しています。 - この演目専用の面(おもて/能面)「弱法師」が用いられます。
能『弱法師』 あらすじ
河内高安*5の里の左衛門尉*6 通俊(ツレ) は、人のざん言(ざんげん)*7により、わが子 俊徳丸(シテ) を追い出してしまいましたが、あまりにふびんに思い、天王寺で七日間の施し*8を行います。
満参*9の日に、よろよろとよろめき歩くところから、弱法師と呼ばれる盲目の乞食がやってきて施しを受けます。梅の香りを聞き、天王寺の縁起を語る、身なりに似ず雅情*10豊かな乞食の少年が、悲しみの余り、盲目となった俊徳丸であることに、やがて通俊は気づきます。風流心と清純さを失わない盲目の少年は、入日*11を拝み、難波の美しい景色を心に映しながら、ひたすら舞います。
夜もふけてから、通俊は父であることを盲目の少年に明かし、逃げる俊徳丸を追いかけ、父はわが子の高安の里に帰ります。
*1 | てんのうじ 天王寺してんのうじ 四天王寺 |
推古天皇元年(593年)に創建された寺院。 日本仏教の祖とされる聖徳太子が建立した。 和宗総本山。 四天王寺前夕陽ヶ丘, 天王寺区, 大阪府, 日本 四天王寺 橋, 富雄元町四丁目, 奈良県, 日本 四天王寺二丁目, 天王寺区, 大阪府, 日本 四天王寺前夕陽ヶ丘, 天王寺区, 大阪府, 日本 543-0051 大阪府大阪市天王寺区四天王寺1-11-18 当時は、難波の浦(海)に面していました。 |
*2 | 梅 | 能『弱法師』は、梅の香りを聞き 袖に散りかかる花びらの様子から 春の半ばの頃の話と分かります。 花と言えば、今も昔も花見とは 梅を楽しむ『弱法師』と同様に 「初春の令月(れいげつ)にして 安倍晋三首相は、新元号「令和」について 「悠久の歴史と薫り高き文化、 天皇の御退位、御即位が行われるこの年に (参考) |
*3 | しゅんとくまる 俊徳丸 |
俊徳丸伝説(高安長者伝説)の口承上の登場人物とされています。 浄瑠璃、歌舞伎、現代劇にも、この伝説や 現在の大阪府八尾市に「俊徳丸鏡塚」という 八尾市, Ōsaka, 日本 (参考) |
*4 | にっそうかん 日想観 |
夕日を拝み、その丸い様子を心に留めるという 日想観を始めたのは 春と秋の彼岸の中日に 四天王寺の西門は |
*5 | かわちたかやす 河内高安 |
現在の、大阪府八尾市にあります。 |
*6 | さえもんのじょう 左衛門尉 |
日本の律令制における官職。
平安時代には、平家追討の際の源義経も任命された職ですが |
*7 | ざんげん ざん言 |
讒言(ざんげん)。
他人を陥れるために言われる事実ではない悪口。 |
*8 | ほどこし 施し |
仏教において、他人に財物などを与えたり その相手のためになるように教えを説くこと。他人に親切にすること。 |
*9 | まんさん 満参 |
期限を定めて行った祈願がその期限に達すること。 |
*10 | がじょう 雅情 |
雅び(みやび)、つまり、 風流,風雅,優美であること。 宮廷の社交では、人情を尊び,粗野になることを排しつつ |
*11 | いりひ 入日 |
沈んでいく太陽。夕日。
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能『弱法師』 背景
作者 | かんぜ もとまさ 観世元雅 (1394あるいは1401 – 1432) |
題材 | 口承で伝わった 俊徳丸伝説であるとも 言われている |
場面 | 摂津国 四天王寺 (現在の大阪府大阪市天王寺区) |
季節 | ちゅうしゅん 仲春 (春の彼岸の日) |
分類 | 四番目物 特殊物 |
能『弱法師』登場人物・キャスト・装束
能『弱法師』シテ シテ方観世流能楽師 中村 裕
能『弱法師』シテ シテ方観世流能楽師 中村 裕
装束・面
シテ 俊徳丸 |
ワキ 高安通俊 |
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冠り物 | ||
仮髪 | 黒頭
黒地金緞鉢巻 |
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能面 | 弱法師 | |
上着 | 水衣 | すおう 素袍上下 |
着付 | 無紅縫箔
襟 – 縫入腰帯 |
だん のしめ 段熨斗目襟 – 紺の類繍紋腰帯 |
袴/ 裳着 |
(素袍) | |
扇 | 黒骨無紅扇 | 鎮扇 |
小道具 | 杖 | 小刀 |
作物
作物 | なし |
出典 観世流謡曲百番集
参考
『弱法師』- 耕漁『能楽図絵』前半 下(松木平吉, 1901)
(→ 「国立国会図書館デジタルコレクション」)
『弱法師』 ― 耕漁『能楽図絵』及び 他の作品
(→ 「文化デジタルライブラリー」)
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